気になるニュース126回「19人め」

【問】
スウェーデンのカロリンスカ研究所は、京都大学の山中伸弥教授にノーベル医学生理学賞を授与すると発表しました。
山中教授が開発した、体のあらゆる細胞に変わる能力を持つ万能細胞を何細胞といいますか。
アルファベット3文字で答えなさい。


【答】
iPS(細胞)

人間の皮膚などの体細胞に、ごく少数の遺伝子を導入し数週間培養すると、さまざまな組織や臓器の細胞に分化する能力と、ほぼ無限に増殖する能力をもつ多能性幹細胞に変化します。
この細胞を人工多能性幹細胞= (induced pluripotent stem cell・・・頭文字をとってiPS細胞)と呼びます。
このiPS細胞を使うことによって、病気の原因の解明や新しい薬の開発、細胞移植治療などの再生医療が発達することなどが期待されています。
また、本人の皮膚の細胞を使用するため拒絶反応が起こりにくく、さまざまな組織や臓器の細胞に分化させられるので、病気や事故で失った臓器を修復する再生治療の可能性も大きくなるのです。
山中教授が、世界で初めて「マウスiPS細胞の発明」を報告したのが2006年のこと。
人類にとって有益な発明であるため、異例のスピードでの受賞となったようです。
もちろん、まだまだ解決しなければならない問題はたくさんあるようです。
この技術を使えば男性から卵子、女性から精子を作ることが可能になるため、同性配偶による子どもの誕生が可能です。
つまり、人間の生命の誕生にどこまで科学がかかわってよいのかという倫理的な問題があります。
またiPS細胞は、発癌遺伝子を導入するなどして癌細胞と同じように無限増殖性を持たせた人工細胞です。
そのため、もともと染色体内にある遺伝子に変異が起こって発癌してしまう可能性があるのではないかとも言われています。
原子力もそうですが、進んだ科学技術は人類にとって「諸刃の剣」です。ただ、それを恐れていては科学の進歩、ひいては人類の発展はありません。
今回の受賞によって、さらにiPS細胞の研究が進むこと。
そしてそれが、現在のところ治療法がないといわれている難病や事故による後遺症などで苦しい思いをしている人々にとっての光となることを願ってやみません。