【問】
北朝鮮が行っているある研究に関して、アメリカと北朝鮮の間で協定が結ばれました。
核兵器の開発にも転用できる、ある物質の濃縮活動を停止し、IAEA(国際原子力機関)の査察も受け入れるという合意で、この合意を元にアメリカは北朝鮮への食料援助を決定しました。
原子力発電にも使用される、「ある物質」の名前を答えなさい。
【答】
ウラン
北朝鮮における核問題は、1994年にさかのぼります。
北朝鮮がそれまで使用してきた黒鉛減速炉を、核兵器の転用に適さない軽水炉にかえるという取り決めが、アメリカのカーター元大統領と北朝鮮の金日成主席との間でなされました。
アメリカとしては、核兵器の拡散と、それに伴って、アジアにおけるアメリカの優位性が危うくなることを恐れていたのです。
しかし、2002年、北朝鮮側が、核兵器開発のための高濃縮ウラン計画があることを認めたため、IAEAはこれに対し非難決議を行いました。
その後、北朝鮮は核拡散防止条約(NPT)からの脱退を表明し、2006年・2009年に核実験を行い、事実上の核保有国となりました。
北朝鮮の核保有は、アジアの平和と安定に悪影響を与えるとして、2003年以降、アメリカ・中国・ロシア・韓国・日本と北朝鮮の間で6カ国協議が行われてきました。
ところが、日本は拉致(らち)被害者(北朝鮮が日本人を強制的に国に連れ帰り、自分の国のために役立たせようとしてきた問題)の問題が未解決のため、北朝鮮に対しての食糧支援は、国民感情を逆なでするために行えない状況です。
2007年の第6回の会議以降、6カ国協議は行われていませんでした。
今回、アメリカと北朝鮮の間で合意した内容は、北朝鮮が寧辺(ヨンビョン)でのウラン濃縮活動を停止し、IAEA(国際原子力機関)の検証を受け入れ、長距離ミサイル発射・核実験を一時停止するというものです。
そしてアメリカが、その見返りとして24万トンの食糧支援を実施する予定です。
この合意の流れから、6カ国協議が再開されることも期待されています。
2011年12月に金正日(キム・ジョンイル)総書記が死去し、三男の金正恩(キム・ジョンウン)体制への移行を開始した北朝鮮としては、食料・財政問題を抱える国内の早期の安定と、内乱の防止、そのために国際社会からの孤立はできるだけ避けたいところです。
また、アメリカもイランとの対立が深刻化していますから、多少の妥協をしてでも、頭を悩ませる問題を一つでも減らしたい。
今回のアメリカと北朝鮮との合意は、両者の思惑(おもわく)が一致した結果といえるでしょう。
ただ、北朝鮮が同意したのはウラン濃縮活動の「一時停止」であり、寧辺以外の施設は査察の対象になっていません。
また、核兵器やミサイルの開発停止に関しては、今まで何度も約束を反故(ほご…なしにすること)にしているため、言葉どおりに信じることは難しいですね。
早期に6カ国協議が再開され、拉致被害問題が解決に向けて進んでいくことを祈りながら、今後の動向に注目していきたいと思います。
(皆実教室M)