気になるニュース104回「鎖国か?開国か?」

【問】
日本が現在参加を検討している「環太平洋経済連携協定」をアルファベットで何といいますか。
【答】
TPP

1858年、江戸幕府大老の井伊直弼とアメリカ領事ハリスとの間に日米修好通商条約が結ばれました。


このとき、日本に関税自主権がなかったため、自国の産業を守れないという問題が起こりました。この関税自主権が回復されたのは1911年のことでした。6年生は歴史で習いましたよね。
関税とは安い外国製品が入ってきたときに、自国の産業を守るために税金をかけて、商品に競争力を与えるためのものです。
この関税を撤廃して、自由貿易を促進しようとしている枠組みが「環太平洋経済連携協定」、いわゆるTPPです。
このTPPは、工業製品や農産品、医療サービス、金融など加盟国間で取引される全品目について関税を撤廃しようという計画です。
これに対し、農産物の輸入自由化を恐れるJAや、医療サービスの自由化や公的医療保険制度が揺らぐことを心配する日本医師会などが反発しています。
日本の農業や日本の医療がこわれるというのです。
しかし、日本は加工貿易の国です。
自動車や建設機械や産業用ロボットなど、外国に輸出することで利益を得ている産業は、数多く有ります。
他国に輸出する場合に、日本だけに関税がかかったらたまりません。日本製品が海外で売れなくなってしまうからです。
経済界は、今交渉に参加しないと、日本の製品は国際競争力を失ってしまうと必死で政府に訴えています。
はたしてどちらの意見が正しいのでしょうか?
確かに自国の産業を守ることは必要です。ただでさえ、日本の農産物の自給率は総合で40%という低い値です。
しかし、日本の輸出品の中で、機械類や自動車が占める割合が高いことも事実です。
あちらを立てればこちらが立たず、野田首相も玉虫色の表現に終始している感があります。
今必要なのは、10年後、50年後の日本をどのような国にするのかという長期的なビジョンではないでしょうか。
ペリー来航のとき、鎖国の続行か、はたまた開国かで国が二分しましたが、開国派も鎖国続行派も、日本のことを真剣に考えて、命がけの議論をしていたのではないでしょうか。
自らの業界の利益のみや、自らの党の選挙での得票ばかり考えて、揚げ足取りの議論に終始せず、本当に現在および将来の国、国民の生活を考えて、決断してほしいものです。
(皆実教室M)