気になるニュース95回「岐路」

【問】
ヨーロッパのある国で、原子力発電所を再稼動させるべきかどうかについての国民投票が行われました。
その結果、再稼動反対が94%以上となりました。
この国の名前を答えなさい。



【答】
イタリア

先の見えない福島第1原子力発電所の現状。
いまだに放射性物質による汚染水などもたまっており、廃炉(はいろ)への道はけわしいものとなっています。
環境への影響はないレベルといいながらも、放射性物質は現在も漏れているようです。
関東地方では、外遊びをやめさせた保育園もあると聞きます。
また、静岡や神奈川などずいぶん距離のある県においても農産物などからセシウムが検出されていることも日々報道されています。
いつになったら、安心して生活ができるのでしょうか。
イタリアでは、1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故を受け、1987年に原子力発電所の廃止が決定されていましたが、産業界が中心となって原子力発電所の再稼動を要請していました。
そこで、政府が原子力発電所の再稼動を決定したのですが、これに対して、野党が憲法裁判所に提訴し、6月12・13日に国民投票が行われたのです。
国民投票の投票率は約57%で、原発再稼動反対が約94%をしめたそうです。
ヨーロッパでは、福島第1原発事故後にドイツとスイスが将来の原発停止を決定しました。
(ドイツ政府は既存の原子力発電所17基を2022年までに全廃することを決定)
ヨーロッパ全体では、まだまだ140基もの原子力発電所があるため、「脱原発」は少数派ですが、今後この流れが加速していく可能性を示唆(しさ)している気がします。
もっとも、「脱原発」を唱えるドイツやイタリアは、足りない電力を原発大国であるフランスから購入しており、完全な「脱原発」というには疑問符がつきます。
自国の安全が優先され、他国の危険は関知しないというのでは、どこか身勝手な感じがするのは否めません。
事故のおこった日本でも、「脱原発」の動きは見られます。
ただ、経済界からは一日も早い原発の再稼動が求められており、経済産業大臣も「安全宣言」を出しました。
今までどおりの生活を続けるなら、このままでは電力が足りなくなるため、原発は必要なのでしょう。
しかし、次から次へと報告漏れや安全性への懸念を無視した事実が出ている現在、はたして「安全宣言」が素直に信じられるでしょうか。
現代における「プロメテウスの火」は人類に繁栄を約束するものなのか、人類を滅ぼすものなのか、ひとりひとりがよく考えなければならないと思います。
そのためにも、適正で正確な情報開示をしてほしいものです。
(皆実教室M)