気になるニュース79回「大国のかげ」

090821.jpg【問】
2010年のノーベル賞が発表されました。
ところが、ある賞を中国人の劉暁波(りゅうぎょうは・リュウシャオボー)氏が受賞したため、中国政府がこれに異を唱えています。
劉氏が受賞したのはノーベル何賞でしょう。


【答】
ノーベル平和賞

ノーベル賞を選定するスウェーデン王立科学アカデミーが、2010年ノーベル賞の各賞を発表しました。
日本人では、鈴木章氏と根岸英一氏が、ノーベル化学賞を受賞しました。
2008年にアメリカ国籍の南部陽一郎氏をふくめ、4人が受賞して以来のことです。
これで日本人の受賞者は18名。
国家としても、自国民が世界から認められるというのは嬉しく誇らしいことだと思います。
ノーベル平和賞は、世界の平和のためや、困っている人たちを助けるために尽くした人に与えられる賞です。
2009年はアメリカのオバマ大統領が受賞しました。
受賞理由は、「核なき世界を目指す」というオバマ大統領の姿勢が評価されたものでした。
それにしては、アメリカが9月に臨界前核実験を行ったことについては、少し矛盾を感じる気がしますが……。
また、日本では佐藤栄作氏(元総理大臣)が1974年にこの賞を受賞しています。
これは「非核三原則」の議決やアジア地域の平和への貢献が評価されたものでした。
2010年の平和賞は、中国の民主活動家である劉暁波氏が受賞しました。
受賞理由は、劉氏が長年にわたって、武器や暴力を使わずに、中国の人たちの言論と自由を求める活動をしているからというものでした。
1898年、中国では、学生を中心に自由を求める運動が盛り上がりました。
ところが、同年6月4日、北京の天安門に集まった学生や市民に対し、中国軍は銃撃を加えるなどして、少なくとも300人以上の市民が死亡しました。
これが「天安門事件」です。
ところが、中国の国内ではこの事実はほとんど報道されていないため、現在でも天安門事件について知らない国民が多くいるそうです。
中国ではいまだに政府によって言論統制がされているのです。
劉氏は、このような状況を打開するために、自由を呼びかける文書を発表し続けたため、何度も刑務所などに入れられました。
2008年には、「08憲章」という文書をインターネットで発表し、中国共産党が一党支配していることを批判して、言論の自由を保障するようと訴えました。
これに対し中国政府は、劉氏の言動が中国の政権を転覆させることを狙ったものだとして、彼を再び逮捕し、裁判にかけて刑務所に入れたのです。
中国では劉氏がノーベル平和賞を受賞したことは報道されていません。
だから、このことを知らない国民も大勢います。
中国政府は、劉氏は自分の国では犯罪者なのだから、ノーベル平和賞を受賞するのはおかしいと批判しています。
また、ノルウェーの駐中国大使を呼んで抗議の意を伝え、「両国関係に損害を与える」と威嚇(いかく)したりもしています。
しかし、言論の自由は基本的人権の一つのはずです。
社会の授業でも取り上げましたが、基本的人権はすべての人が生まれながらに持っている、人として生きるための権利です。
それが保障されない状態では法治国家だと胸をはって言えない気がします。
世界の国々からも、中国政府の対応に批判が出ています。
中国はどうするのか。
今後も注視していかねばならないと思います。
(皆実教室M)
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