銀行破綻で施行されたしくみ
【問】
2010年9月、日本振興銀行が経営破綻(はたん)したため、預金者の保険を1000万円まで保護するしくみが日本で初めて発動されました。
このしくみを何といいますか。
【答】
ペイオフ
「銀行が倒産する」
このうわさが流れると、銀行に預金者が殺到(さっとう)し、我先に預金を引き出そうとします。
しかし銀行には、お金が無尽蔵(むじんぞう)にあるわけではありません。
預金者が預けたお金に、金利を上乗せして他の個人や企業に貸し出すことによって、銀行は利益を得ているのです。
ですから、銀行にお金を引き出す人が殺到したら、銀行はひとたまりもなく倒産してしまいます。
このような騒ぎを「取り付け騒ぎ」といいます。
預金者に安心を与え、また銀行を保護することで金融の安定をめざすために、以前は「護送船団方式」といって、大蔵省(現在の財務省)の監督の元、どの銀行も同じ金利、同じようなサービスでした。
そのため国民は、銀行が倒産するとは思わなくなってしまいました。
しかし、欧米で始まった金融自由化の波にさらされ、日本も1996年から金融の自由化が始まりました。
これを「金融ビックバン」といいます。
各銀行が独自の金利によって定期預金を集めてもよいことになり、銀行同士の競争が激しくなりました。
また、元本の保証のない(預けたお金よりも返ってくるお金が少なくなる可能性があること)商品なども銀行で販売されるようになりました。
体力のない銀行は、大きな銀行に吸収され、銀行の統合・再編が加速する一方で、銀行の倒産が現実のものとなり始めたのです。
銀行が倒産した場合に、預金者を保護するためのしくみが「ペイオフ」です。
「ペイオフ」とは、銀行などの金融機関が破綻した場合、金融機関が加入している「預金保険機構」が預金者に、元本1000万円とその利息までを払い戻すことです。
(もっとも、銀行1行につき1000万円を超える預金は保護されません。)
そして今回、1971年に預金保険制度が発足して以来、初めてペイオフが発動されました。
今回、経営破綻した日本振興銀行は、高い金利で預金を集め、中小企業にお金を貸すことを目的として設立された銀行でしたが、リスクの高い無理な融資のため経営が悪化し、さらには経営陣が銀行法違反で逮捕されたりもしていました。
そして経営破綻、日本初のペイオフの発動となったのです。
「お金は銀行に預ければ安心」という考え方は、時代と共に変わってしまいました。
これからは個人が金融知識を持ち、自らの預金は自ら守るという考えでいなければならないのでしょう。
(皆実教室M)