気になるニュース413回「鹿の命の使い道」

【問】

最近、鹿などが増えすぎて農家にとって害獣となっています。そのため、積極的にそれらを狩り、ジビエとして提供しようとする取り組みが進んでいますが、それ以外にも殺した鹿の肉を有効活用している団体があります。どんな使い方でしょうか?

【答】

そのままに近い形で、ライオンなどの肉食獣の餌にする

福岡県の大牟田市動物園と九州大などが進めているプロジェクトです。食肉用に加工された形ではなく、骨や皮などもついたままのまるで野生で狩りをしたかのような形で与えるそうです。もちろん、仕留めてからしばらくたっているので、感染症の恐れがある頭部や内臓を取り除くなど細心の注意は払っているとのことですが。

通常の肉を渡した時と比べると、明らかに興奮した様子を見せたり、物陰に餌を隠したりするなど、普段とは違う様子を見せるそうです。中にはこういったショーめいたやり方を好まない人もいるかもしれませんが、本来はライオンやトラなどの肉食獣はこうやって食事をするのが本来の姿です。人間側の都合もあるかもしれませんが、動物園の動物たちにとってもよい取り組みだと私は思います。

こうした動物のストレスを軽減する方策のことを環境エンリッチメントと言います。動物園の動物は人間の都合でそこにいるわけですから、できる限りのことはしてあげるべきですし、そこに害獣問題となっている鹿などを組み込むことは、少しでも命を無駄にしないことにもつながります。人間は動物には食べられませんが、食物連鎖の良い繋ぎ手ではありたいものですね。

(五日市教室T)