【問】
特に水鳥の生息地として重要な湿地を保全・再生を目的として国際的な条約は何ですか。
【答】
ラムサール条約
この条約は、1971年に、イランのラムサールで採択された条約です。
本条約では、その地域の産業や人々の生活と調和した保全を進めることを目的とし、湿地の「賢明な利用(ワイズユース)」を提唱しています。
湿地の生態系を維持しつつ、得られる恵みを持続的に活用していく。
それはまさしく自然との共存の一つの型であり、子孫たちのためにも望ましいことです。
というのは、一度埋め立てたりすると、元の姿に戻すには莫大な時間と労力がかかってしまううえ、復原するまではその恩恵を受け取ることもできないからです。
開発・保全にあたっては慎重さが必要になります。
日本の登録地としては釧路湿原や琵琶湖が有名ですが、最近では宍道湖や中海、秋吉台地下水系、沖縄慶良間諸島や石垣島の名倉アンパルなど、汽水湖やさんご礁、マングローブ林、アカウミガメの産卵地、地下水系など幅広い多様な地域が登録されています。
世界全体では、1500か所を越える地域が登録されています。
沖縄県沖縄市に泡瀬干潟(あわせひがた)という干潟があります。
干潟やその周囲の浅海域の広がりとしては南西諸島最大級の規模なのですが、この干潟の埋め立て事業が、現在問題となっています。
埋め立ては先日工事が再開され、現在も進行中ですが、賛否両論があります。
埋め立ては住民の悲願だという賛成派と、失われる自然があまりにも大きいという反対派。
干潟の貝類や海草類の数も非常に多く、新種や170種以上の絶滅危惧種の存在も工事中止の理由として挙げられています。
先日のテレビでも、生物の多様性では日本トップクラスの干潟が公共事業で失われていく様子が放送されていました。
環境と生活との両立が強く意識されている現在では、環境アセスメント(開発事業に先立って、環境への影響を事前に調査し、事後を予測すること)の緻密さ・正確さが必要です。
泡瀬干潟の埋め立てでは、これらの調査や予測も不十分だという声も挙がっています。
過去に行われた国の公共事業などで、建設目的が公共事業ありきであったため、たとえば新しく建設された道路や建物が、甘い需要予測のせいで大赤字を出しているといった例も指摘されています。
泡瀬干潟を埋め立て、約187haの人工島を築き、大型ホテルなどを誘致してマリンリゾートを形成する、というのが当初の計画だったようですが、はたして現在の社会情勢にあっているのでしょうか。
「すでに着工している」ということを大きな理由として工事を進めるのは危険なのではないでしょうか。
開発と保全、考えさせられる問題です。
今、この瞬間も埋め立ては進んでいるのでしょう。
皆さんもいろいろ調べて、工事の是非について考えてみてください。
自分の身のまわりにないことへも想像の心を持ち、自分自身の問題としてもさまざまなことを考える姿勢を身につけていってください。
(五日市教室A)