それでもI will be…(285)

前回のブログで富士山登頂を果たしたわけですが、本当の試練はそこからでした。
富士山からの帰宅の途につこうとした私たちは、売店で念のため予備の水を買おうとしてびっくりです。
500mlのペットボトルが500円もします。
軽食なども、およそ5倍の値段です。
ここまで荷物を運ぶ人の苦労と危険を考えれば、納得のいく値段です。
これは登った人にしかわからない感覚かもしれません。
金銭感覚を超越した何かがあるのです。
しかし……財布の中身に変化はなく、買わずに下山することを決意しました。

下山を始めて最初の感覚は一言です。
楽。
非常に楽な道のりでした。
大きな岩などもなく、舗装して固められた道でこそありませんが、なだらかな下り道なのです。
それがひたすらにジグザグと続いていて、見晴らしも非常に良いです。
気をつけるのは、柵などないので山側を歩いていないと滑って落ちる危険があることくらいです。
これは景色も最高のハイキングだ!

……1時間後、そんなことは言えなくなりました。
まず、体重がかかるつま先が痛くなり始めたのです。
これは靴や歩き方にもよるでしょうが、地味に痛み続けました。
そして、景色に飽き始めると、一気に疲労になって襲い掛かってきます。
起伏がない分、同じような道が続くため、進んだ気がしないのです。
それでも、めげることなく進んでいたのですが、新たな問題が発生しました。
日が暮れてきてしまったのです。
懐中電灯は用意していましたが、富士山ですから当然明かりは何もありません。
おまけに空は曇天で、月も星も見えません。
そうなると、用意した懐中電灯がパワー不足であったことに気づかされました。
誇張抜きで2メートル先くらいしか見えず、ボーっと歩いていると、道を踏み外しかねません。
あっという間に下り道はスリル満点の恐怖のロードと化しました。

ただ、そんな中でもいいことはあります。
強力な懐中電灯を持っていたグループと合流し、一緒に下山を始めたのです。
そちらのグループは雨でタオルが全てぬれてしまっていたので、こちらの予備のタオルを貸してあげました。
初対面の人間でも、自然と助け合いができる、そんな場所でした。
そして午後9時半。
ようやく、5合目まで帰り着きました。
富士山から降りる最後のバスにどうにか滑り込んだものの、計算して見ると麓の河口湖駅から下宿のある町までの終電に間に合いません。
ATMでお金を下ろせばタクシーで帰れますが、学生には痛い出費です。
そこで、同じゼミで車を持っている友人に迎えを依頼しようとしたのですが、一緒に登った友人の携帯はすでにバッテリー切れ。
私のものも、バッテリーマークが点滅している状態。
通話も無理ですし、長い文面を打っていたら途中で切れるかもしれません。
幸い、その友人は今日の富士登山を知っていましたので、いちかばちか「河口湖駅まで迎えに来てくれ!」
とだけ打って送信しました。
その直後にバッテリーは切れ、返信を確認することすらできない始末。
流石に無理だな、と思いながらバスを降りたのですが、駅前にはその友人が車に乗って待っていてくれました。
話を聞くと、文面が短いことや返信がないことから大体の状況は察してくれたとのこと。
つくづく持つべきものは友だと思いました。

長々と書いてまいりましたが、富士登山のようにつらいものには、必ず達成したときの喜びが待っています。
そして、本来の目的以外にも得るもの、気づくことは多くあるはずです。
夏休みはぜひ、勉強以外の面でも、普段できないことに挑戦してみてくださいね。

(五日市教室T)