文系講師として生徒たちと接していて常々思うのが、言葉を伝える難しさです。
特に年々難しくなっていくのが、言葉の意味を知らない相手に、いかにして授業の限られた時間内にその意味を教え、覚えさせてあげられるか、ということです。
たとえば、社会の中で5年生の1Termで扱う農業の内容で「近郊農業」「抑制栽培」「促成栽培」という言葉があります。
それぞれの意味は以下のようになります。
近郊農業……大都市の近く(郊外)で行う大都市向けの作物を作る農業
抑制栽培……本来の作物の成長」を抑えて制限して作る、遅作りの栽培方法
促成栽培……作物の成長を促して作る、早作りの栽培方法
こうして並べてみると、漢字の持つ意味を知っている大人からは覚えやすいように見えます。
ですが、まだその漢字の意味を知らない生徒たちからすると、どっちがどっちだったかわからなくなる、という声が多く聞かれます。
ここで
「いいからとにかく丸暗記しなさい!」
と言ってしまうとすべてが台無しです。
時間がかかった上に記憶から抜けるのも早く、新たな漢字の意味や語彙を獲得するチャンスも逃してしまいます。
どうせ同じ時間をかけるのなら、漢字が持つ意味をきちんと伝えて、理論的に覚えたほうが記憶も長く残りますし、応用も利きます。
こういった現象は社会の専門用語などでなくとも起こりうるようになっています。
例えば、「右」という言葉の意味を教えるだけでもとても難しいことなのです。
この下に、とある本で紹介されていた右の説明を載せていますが、読む前に少し考えてみてください。
思いつきましたでしょうか?
一般的に昔から言われてきたのが、
「はしを持つほうが右手、茶碗を持つほうが左手」
というものですが、左利きの人が増えてきた今となってはまず通用しないのではないでしょうか。
次に思いつくのが、
「北を向いたときに東があるほうが右」
というものですが、これは確実に全ての人に共通するものの、おそらく東西南北を覚えるころには左右も覚えているでしょう。
その本で紹介されていたのが、
「数字の10を書いたときに0がある方が右」
というものでした。
これには少し感心させられました。
講師として心がけないといけないのはいかに小難しい言い方ができるかではなく、生徒のレベルに合った範囲内で、新たな知識を与えていくことだと思います。
授業の内容をただ伝えるだけでなく、言い回しや伝え方でも、まだまだ修練の必要を痛感する日々です。
逆にご家庭では、少しお子さんよりも上のレベルの語彙を意図的に使ってみてください。
新しい言葉に対する知識欲を刺激することは学習意欲につながる場合も多いですよ。
(五日市教室T)