恩田陸の『夜のピクニック』を読んだ。
この作品は2005年度「本屋大賞」の受賞作でもある。
「本屋大賞」は、全国の書店員が一番売りたい本を選ぶ賞だ。
文学的なかたい本よりも、エンターテイメントに富んだ作品が選ばれることが多い。
そのため、気楽に手に取りやすいかも。
私は基本的にミステリーというジャンルは読まず嫌(ぎら)いだ。
一冊全部読み終われる時間が取れるならいいのだが、そうはいかず、一章ずつ読むしかできないので、少しずつ謎(なぞ)が解けていくというミステリーは読みにくいからだ。
そんな私が、ミステリー作家というジャンルにくくられることが多い恩田陸に手を出したのは、以前大量購入した本の中に「ネバーランド」が入っていたことからだ。
『ネバーランド』―――この本を読み終わった感想は一言。「すご~い!」
何がすごいって、全く物語の展開する場所(この話の場合、男子校の寮)に変化がなく、また登場人物が増えることもなく、読み始めと読み終わりで話の展開・状況に変化がなく終わる。
すばらしい! これで、読み応えのある作品になるなんて!!
今回読んだ『夜のピクニック』も同じ感想。
物語の展開する場所は歩行祭という、高校の行事。
これがまた80キロという距離を一晩かけて全校生徒1200人がひたすら歩くというただそれだけの行事。
一つの物語の中、ただひたすら歩くだけ。
人物設定はおもしろい!
1人の高校生の男の子、その子の父親が他の女性とのあいだに生んだ女の子、つまり異母兄弟と、同じ学校の同じ学年の同じクラスになる。
男の子は女の子を憎んでいる、女の子は男の子と話してみたいが罪の意識からか避(さ)けている。
二人は同じクラスになっても一度も話したことがなく、この行事を迎える。
すごいよ! これだけで、一つの小説ができそうだ!
しかし、物語が終わる段階でも、この状況は「話すことができた」に変わるだけ。
す、すごい! これだけ凝(こ)った人物設定にしていながら全くキャラをいじっていない(笑)
この作家のすごいところは、物語のふくらませ方がすごくうまいこと。
何か事件を起こしてそれから展開していくわけでなく、さすがミステリー小説家!
読んでいくにつれて、少しずつ登場人物のサイドストーリーや、家庭環境、性格を小出しに小出しに出してきて、読み終わる頃には、しっかりとした人物像を読者に作り上げさせている。
ぜんぜん本編と関係のないようなサイドストーリーも、実は物語の核になる部分にきちんとリンクされていて、あぁ、ここでこの話と繋がるのね! と感心してしまう。
この話の中に「引き算の優しさ」という表現が出てくる。
相手のために何かしてあげる―――これは「足し算の優しさ」
相手のために何もしない―――これは「引き算の優しさ」
でも何もしないのは、相手にはなかなか優しさとして捕らえてもらえないもの。
「私のために何もしてくれないんだ」って考えることができるということは、その人を信頼していないとできないものだと思う。
つまり、「引き算の優しさ」っていうのは信頼関係の上で初めて成り立つものなのだ。
自分に対する「信頼」というプラスの部分があるため、「マイナスの優しさ」で補えて、差し引きゼロになれるんだろうなと思いながら読んだ。
こういう表現をさらっと書ける作家、こういう表現がさらっとちりばめられている作品が「よいもの」なのだろう。
おすすめ度 ☆☆☆☆
私もこんな行事参加したいな~度 ☆☆☆
友だちのよさ再確認度 ☆☆☆☆
読後の疲労度 ☆☆
読後の爽快度 ☆☆☆
(横川駅前教室T)
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■新年度説明会のご案内
●日時:2/25(月) 3/3(月) 13時~14時
(3月まで毎週月曜日開催。個別相談会は随時受付中です)
●場所:アイル全教室
※予約は不要です。直接各教室までお越し下さい。
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■3/3(月)から新年度第1Term開講
3/3(月)から、新年度の第1Termの授業がスタートします。
なお、ただいま3/1(土)までの予定で、夢から目標への昇華、計画の立て方・学習のやり方などを、具体的な学習を通して学んでいくスタート講座を開講中です。
全学年・全クラスとも授業体験・見学をお待ちしておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
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